araffordable watches

あくまでコスパの高い時計を求めて行く。時々は高い時計に目移りもする。

ティソのエブリタイム スイスマティックから機械式時計製作の完全オートメーション化について思うこと


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スウォッチグループの中で、コストパフォーマンスにすぐれる時計をラインアップしているティソ。歴史はまだあまり調べてないからよくわからないけど、80時間パワーリザーブとか、クロノメーター仕様のものとかを他社よりもだいぶ安い値段で展開している。
そんなtissotから、90時間のパワーリザーブ仕様のものが出ている。名前はエブリタイム。昨々年から出してるみたいだけど、当時はクォーツのみだったようだ。ムーブメントがスウォッチのシステム51に似てる…そういえばシステム51もパワーリザーブ90時間。システム51は、51個という非常に洗練された少ないパーツ数で、しかも完全オートメーションで作られているムーブメント。スウォッチがクォーツを作ったときも51個のパーツで作ってたらしく、同じ数にこだわり機械式ももっとカジュアルにしたいという思いがあるのだろう。システム51採用のスウォッチは20000円くらいで、かつパワーリザーブ90時間というスペックで惹かれた記憶がある。でも海外のサイトで分解してるのを見て、脱進機とガンギ車がプラスチック(ぽい、少なくとも金属ではない)だったので、萎えてしまい購入する気が起きなくなった。外側もプラだから別にいいと思えればよかったが、その頃はまだなんか機械式は金属であるべきというか、そんな気持ちだった。
その中身を使ってティソからのラインアップ。ガワはステンレスで、パっと見はカジュアルなクォーツのよう。北欧デザインとかのミニマルなデザインで、いまのひとつの流れには乗ってるのかも。それでいて、中身は機械式。パワーリザーブ90時間。
この時計のおかげで、もしかしたら機械式時計に対する価値観が変わるかもしれない。いろいろ整理してみよう。


感じたことその1
機械式は高くて手間がかかる(ゼンマイ巻きや時刻合わせやもしかしたらオーバーホールの)イメージを少しは変えられるのかも。システム51はカジュアルすぎるきらいがあったけど、これはガワがステンレスでシンプルなデザインなので、いままで持ってたクオーツ時計を買い換える気持ちにはなりやすいかも。機械式は古典的でマニア向けというイメージを少しは崩せそう。もちろん、買う側に機械式自体の知識と興味が少しはある前提だけど。


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デザインはシンプル。オンオフ両方でも使える飽きのこなそうな佇まい

感じたことその2
ムーブメントが完全オートメーションで作られていて、オーバーホールは基本に無理(ネジでなくリベット留めされており、またコスト面からも設計思想側からも考えられていない)。自分で、または修理士に分解してもらえなさそうなところがマイナス。ポテンシャルの問題だけど、機械式はオーバーホールしなきゃいけないけど、すればそのぶんずっと使えます的なセールストークが染み付いているので(実際はメーカーがパーツ供給打ちきったら終わりだけど)、オーバーホールできないとなるとなんか哀しい。あとは機械式の相対的な立ち位置的に、ICとかの超微細なもの、テクノロジーを駆使したものは使いませんよ、という宣言(してないけど笑)との乖離を少し感じる。完全オートメーションで作られているということへの困惑。機械式という、他のムーブメントに比べて人間的で暖かみのあるものがそんな風に作られると、なんかどの引き出しにしまっていいかわからなくなってしまう。他のメーカーももしかしたら既にそうかも知れないけど、そんなことおくびにも出さない業界にあって、そこまでスパッと言われると、ずいぶんと機械式という言葉の意味を固定化しすぎてしまっている自分との対峙が生まれる。これを買ったとき、まわりからそれって機械式だけどオートメーションでしょ、とか言われたらどう答えるか。機械式だけどオートメーションをすることで、ロングパワーリザーブや精度の向上やもしかしたらメンテナンスフリーとかに貢献しているのかもしれない。いや、手作業こそが機械式の本望。でもそんな時計ばっかり集めてる訳じゃないしなあ…とかいろいろ。


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システム51にくらべ、ローターや地板が金属感あり。香箱がシースルーで巻き具合がある程度分かるようになっている

 

自分のなかでこの時計をどう評価したらいいかまだわからない。カジュアルに時計を使いたい(使いこなすほどの思いはない)が、歯車とゼンマイで動いている感覚をオシャレと思える人で、かつスウォッチよりも高級感のある時計を求める人向きか。なんかもっと刺さるキャッチコピーはないものか、メーカーの代わりに考えてしまうような笑、そんな時計のひとつではある。ラインアップモデル数の推移を見守りたい。